原発・核燃問題の動き(2020年12月)

 今月の初め、福井県の大飯原発3号機と4号機について、福井県と近畿地方の住民130人が国に設置許可の取り消しを求めた裁判の判決で、大阪地裁は原子力規制委員会の審査は不合理であるとして、住民の訴えを認め、設置許可を取り消しました。設置許可を取り消す判決は初めてとのことです。福島第一原発事故の反省を踏まえ、予期せぬリスクを適切に評価した当然の判決ではないでしょうか。しかし、国は判決を不服として控訴したので、裁判はまだまだ続きます(「大飯原発の設置許可取り消し 安全性めぐり大阪地裁判決」朝日新聞2020/12/4)。

 青森県では、六ヶ所村で建設中のMOX燃料工場が原子力規制委員会の安全審査に正式に合格しました。その後、MOX燃料工場の完工予定を2022年上期から2024年上期に延期しました。7回目の延期になるとのことです。プルトニウムを扱い、核燃料サイクルを担う重要施設でしたが、高速増殖炉の開発に失敗した今、何のために建設するのかが分からない施設になってしまいました(「MOX工場、新規制基準に正式合格 原燃主要施設全て審査通過」河北新報2020/12/10、「MOX工場完工2年延期 原燃 安全対策増、24年度上期に」河北新報2020/12/17)。

 また、むつ市に建設中の使用済み核燃料中間貯蔵施設をめぐってむつ市と電気事業連合会がもめているようです。電気事業連合会が中間貯蔵施設の「共同利用」を目指して画策を始めたことに対して、むつ市長は大変憤慨しているとのことです。全国の原発の使用済み核燃料の保管場所が足りなくなっていることがあり、電力業界も必死です。むつ市は頑張りきれるでしょうか、それともお金をもらって満足するといういつものパターンで終わるでしょうか(「むつ・中間貯蔵施設に共同利用案 電事連が検討、関電支援狙う」河北新報2020/12/11)。

 最後に、国は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとするための「グリーン成長戦略」を決定しました。その中で、再生可能エネルギーの電源構成における比率を50〜60%に高める方針を示したとのことです。現状は(水力を含めて)18%程度というところですが、福島第一原発事故後、ほぼ倍増していますから、今後30年で3倍に高めることは十分に可能でしょう。もうすぐ事故から10年です。事故の教訓を胸に刻み、原発に頼らない社会の実現を目指していきたいものです(「再生エネ5割超を明記 政府、グリーン成長戦略決定」日本経済新聞2020/12/25)。

(2020.12.28 事務局)

原発・核燃問題の動き(2020年11月)

   今月、宮城県の村井嘉浩知事が、女川原発2号機の再稼働に同意することを表明しました。女川原発は福島第一原発事故を受けて停止し、その後、1号機は廃炉となりましたが、2号機は今年2月に安全審査に合格していました。この間、宮城県内では再稼働の賛否をめぐってさまざまな動きが見られていましたが、とうとう知事が再稼働賛成を表明したということです。地元経済の活性化の期待が背景にあるようですが、福島県の隣県で、福島第一原発事故の教訓はどこへ行ったのかという感も否めません(「女川の再稼働、宮城知事が同意表明 被災原発で初めて」朝日新聞2020/11/11)。

 再稼働と言えば、もう一つ、福井県の高浜町議会が高浜原発1号機と2号機の再稼働に同意しました。高浜原発も福島第一原発事故受けて停止していましたが、3号機と4号機はすでに再稼働しており、いわゆる「40年超の老朽原発」呼ばれる1号機(1974年操業)と2号機(1975年操業)の再稼働が焦点になっていました。通常の原発の再稼働よりもリスクが大きく、多くの安全対策工事が必要で、多額の費用がかかります。安全面も経済面も心配ごとだらけです(「高浜原発の再稼働、地元町議会が同意 老朽原発で全国初」朝日新聞2020/11/25)。

 我らが青森県では、六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターが安全審査に合格し、放射性廃棄物の受入のための調整が始まったとのことです。日本の電力会社は原発の使用済み核燃料を海外の企業に委託して再処理を進めてきましたが、その際に発生した放射性廃棄物の返還が再開するということです。六ヶ所村はコロナ禍でも景気が良いとのことですが、人々が嫌がるものを受け入れてお金をもらうというのもどうなのでしょうか(「“核のごみ” イギリスからの返還 来年度5年ぶり再開へ調整」NHK NEWS WEB 2020/11/9)。

 また、むつ市の中間貯蔵施設について、原子力規制委員会が安全審査の「審査書」を決定したとのことです。こちらは原発の使用済み核燃料を再処理を行うまで一時的に貯蔵するための施設で、原発の敷地外の貯蔵施設としては全国で唯一であるとのことです。立派な話ですが、要するに、再処理工場が操業するまでの時間稼ぎのための施設です。人々が嫌がるものを次から次へと受け入れるということですね(「原子力規制委、むつ・中間貯蔵審査合格 原発敷地外で唯一」河北新報2020/11/12)。

(2020.11.30 事務局)

 

原発・核燃問題の動き(2020年10月)

 今月は青森県に関わるニュースがいくつもありました。

 まず、下北半島の佐井村と青森県民エネジー(八戸市)が共同で、自治体新電力「さいエナジー」を設立することに合意したとのことです。地域の再生可能エネルギーが生み出した電力を地域に供給し、収益の一部を地域活性化事業の財源に当てるという試みで、実現すれば青森県内では初の事業になります。再生可能エネルギーによる地域活性化が進むなら、ますます原子力は不要になるでしょう(「青森・佐井村が新電力会社設立 県民エナジーと協定書 22年度公共施設へ電力供給」河北新報2020/10/1)。

 他方、六ヶ所村に建設中のMOX燃料工場の安全審査について、原子力規制委員会は審査書案を了承したとのことです。プルトニウムを消費するプルサーマル計画を推進し、再処理工場の稼働の正当化するための施設ですが、そのために総額16兆円もの費用がかかるという話もあります。この工場自体、すでに6回の延期を繰り返し、2022年完成予定とのことですが、果たしてどうなることでしょうか(「MOX燃料工場、新基準「適合」2022年完成めざす」朝日新聞2020/10/7)。

 政府と青森県の核燃料サイクル政策に関する協議会が10年ぶりに開催されたとのことです。三村知事は相変わらず「青森県を高レベル放射性廃棄物の最終処分地にしない」ことの確認を求めたそうです。しかし、最終処分場は国内のどこかに建設しなければなりません。核燃料サイクルの推進を求めながら、最終処分場は受け入れないという態度は矛盾に満ちているように思えます(「核燃サイクル「最終処分地とせず」の順守を 青森県、政府と10年ぶり協議」河北新報2020/10/22)。

 この夏、原子力船むつが日本船舶海洋工学会から「ふね遺産」認定されたとのことで、その記念式典がむつ市の原子力記念館で開催されたとのことです。1974年、大湊港を夜逃げのように出港し、試験航海を開始した途端に放射線漏れ事故を起こしたあの「むつ」です。その後、実験航海を終え、現在は海洋調査船「みらい」として活躍しているそうですが、青森県にとっては大迷惑でした(「原子力船むつ、ふね遺産に 「負の遺産だ」と非難の声も」朝日新聞2020/10/26)。

 ところで、菅政権が誕生して初の国会が開会しました。菅首相は所信表明演説で、地球温暖化ガス排出量を2050年までに実質ゼロとすることを明言しました。学術会議問題ではグタグタですが、再生可能エネルギーの普及を中心とする地球温暖化対策は是非ともしっかり進めてほしいです。ただ、そのことを原発再稼働の口実にしないよう、私たちもしっかり監視していかなければならないでしょう(「首相が初の所信表明演説 温暖化ガス「50年までにゼロ」」日本経済新聞2020/10/26)。

(2020.10.26 事務局)

会員からのメッセージ

第32回市民講座の感想です。講演者の岩田氏は、我々の会の発足以前から核燃の問題に取り組み、いわば我々の先輩格にあたります。その岩田氏がいかに核燃問題に出会い、そして宗教者の会の訴訟を起こすまでの経緯の話は大変迫力のあるものでした。また、写真家でもある岩田氏は、核燃反対運動の内部からの写真集だというその作品はどれも心を打つものでした。

(2020.10.20  代表 宮永崇史)

原発・核燃問題の動き(2020年9月)

 2020年の上半期、再生可能エネルギーによる発電量が国内総発電量の23%に達したそうです。2018年に閣議決定された第5次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーが主力電源と位置づけられるとともに、2030年までに電源構成の「22〜24%」を実現することが目標とされましたが、その目標を10年も早く達成したということです。もともとやる気のない目標だと言われていました。今回、新型コロナ感染拡大による電力需要の減少など、再生可能エネルギーの拡大に有利な条件が重なったとのことですが、本気で取り組むなら、2030年までに30%〜40%あたりを目標できるのではないでしょうか。そんなことになったら、原発は必要ないと言われそうなので、やる気のない目標に徹しているのでしょうか(再生エネ、国内総発電量の23%に 政府目標に並ぶ水準」朝日新聞2020/9/25)。

 福島第一原発事故の関係では、福島県内の避難者たち約3700人が国と東電に賠償請求の支払いを求めて提訴した「なりわい訴訟」の控訴審判決で、仙台高裁は福島地裁の一審判決(2017年10月)に続き、国と東電の責任を認めつつ、一審判決の倍の約10億円の支払いを命じました。控訴審判決としては3件目で、高裁が国の責任を認めたのは今回が初になります(「原発事故、国の責任認める 仙台高裁判決で初の判断」朝日新聞2020/9/30)。

 青森県内では、大間原発の工安全対策工事と運転開始予定が各々2年延期となりました。世界初の、世界一危険なフルMOX型の原発です。プルサーマル計画の推進のために不可欠とのことで、国内で唯一建設中の原発です。運転開始は2028年度に延期とのことです。2008年の着工以来、7回目(報道では4回目)の延期になるのですが、この原発は本当に大丈夫なのでしょうか(「大間原発、安全対策工事2年延期 審査の長期化が要因、運転開始も先送り」河北新報2020/9/11)。

 最後に、六ヶ所村の再処理工場とウラン濃縮工場で、核物質拡散防止のために国際原子力機関(IAEA)が設備に取り付けているワイヤーが切断される事案が複数回起こっていることのことです。起こってはいけないことが、立て続けに起こっているようです。毎度おなじみの再処理工場のトラブルです。こんな施設が、先月、原子力規制委員会の安全審査に合格したというのですから、噴飯ものですね(「日本原燃 再処理工場でワイヤー切断相次ぐ」NHK NEWS WEB 2020/9/17)。

(2020.9.30 事務局)

会員からのメッセージ

今日(9月25日)の朝日新聞の一面に、次のような記事が載っていました。

「国内の総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が2020年上半期(1月~6月)に23.1%に達していたことが国際エネルギー機関(IEA)の集計で分かった。再生エネの増加に加え、新型コロナウイルスの影響で電力需要全体が落ち込んだことも影響した。政府は30年度までに再生エネの比率を「22~24%」にする目標を掲げており、目標の引き上げを求める声が強まる可能性がある。」

 IEAが日本を含む加盟国から報告された電源別の発電量の速報値を集計したものです。

それによると、日本の上半期は、再生エネの発電量が前年同期より18.6%も増えました。

太陽発電が14.3%伸びたほか、建設が進んできた風力も18.5%、バイオマスも22.7%増と、それぞれ大幅に拡大。水力発電も21.8%増でした。

 一方で、新型コロナの感染拡大で経済活動が停滞したため、総発電量は前年同期比で5.4%減少。燃料費がかかる天然ガスや石油などによる発電が抑えられ、再稼働していた原発も安全対策などで一部が止まりました。その結果、再生エネの比率が19年の18.6%から一気に高まりました。

 IAEAの集計は、日本が公式に採用する総合エネルギー統計より約1%大きく出やすいといいますが、日本エネルギー経済研究所によると、「電力需要の減少傾向が続けば、今年は通年でも再生エネ比率が政府目標の22%に迫る可能性がある」と指摘しています。

 目標達成は新型コロナによる一時的な側面もありますが、再生エネの発電量自体は今後も増加が見込まれます。総発電量の低水準もコロナ後の生活様式の変化で定着する可能性があります。

再生可能エネルギー以外の電源を見ると、天然ガス31.6%、石炭31.6%、石油6.1%、その他が1.6%、原発は6.0%でした。現在稼働している原発は、全国で東京電力福島第一原子力発電所の事故時の54基に比べ、4基しかありません。それでも深刻な電力不足の声は聴かれません。

 政府は来年夏には、3年に一度と定められているエネルギー基本計画の改定に向けた議論を本格化させます。現実を直視すれば当然、次期計画では原発への依存度を下げるしかありません。そのかわり、再生エネ比率を引き上げるのです。それは、将来の原発ゼロへの道筋にもつながります。

福島の事故を経て原発を巡る内外の情勢が一変したにもかかわらず、政策を先祖返りさせた結果、さまざまな矛盾が噴出しています。

2030年の政府目標では、原発の比率が福島の事故前の水準に近い22%~20%に設定していますが、福島第一原発のほか、老朽化した原発も廃炉が決まり、原発の設備容量は事故前より約3割減っています。現在計画中の原発を含めてもこの目標に達することは絶望的になっています。

安倍首相が成長戦略として力を注いだ原発輸出も頓挫しました。9月16日、日立製作所が英国での建設プロジェクトからの撤退を決定しました。実現が見込める案件は無くなりました。

破綻が明らかな核燃料サイクル政策を堅持してきたことは、国際問題にもなっています。

使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する方針ですが、原発の稼働が広がらないため使い道はなく、核兵器の材料にもなるプルトニウムが積みあがっているからです。

 現在、世界の趨勢である、脱原発、脱炭素で再生可能エネルギーへの転換にいち早く舵を切る方針に、日本の政府も向かうべきなのです。「既得権益、悪しき前例主義を打ち破る」と述べた菅首相は、官僚の方にばかり目を向けずに、エネルギー政策でも先頭に立ち、安全対策や、使用済み核燃料の処理に莫大な費用の掛かる原発を見直す方向へ向かって欲しいものです。政策を抜本的に作りかえる好機なのですが、安倍政権の継承を唱える菅首相にそれができるでしょうか。

(2020.9.25 地区労連 須藤健二)

原発・核燃問題の動き(2020年8月)

 今月は、北海道の寿都町が高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地としての文献調査に応募することを検討しているというニュースが注目を集めました。最終処分場の文献調査を受け入れると、最大20億円の交付金を獲得することができます。人口3千人足らずの過疎の町にとってあまりにも魅力的です。しかし、高レベル放射性廃棄物は安全な状態に戻るまで少なくとも10万年かかると言われています。本当に大丈夫でしょうか。案の定、町民も周辺の町村も道も大騒ぎだそうです(「核のごみ最終処分場 寿都町が調査応募検討 町長「財政見据えた」」北海道新聞2020/8/13)。

 他方、福島第一原発事故を受けて厳しくなった安全基準をクリアするために、各地の原発で追加的安全対策工事が行われていますが、それらの費用が総額で5.2兆円に達することが明らかになりました。まだまだ増える見込みとのことです。これらは原発の発電コストを押し上げる要因になります。安全基準を厳しくすればコストが増えるのは当然です。それでも世界標準と比較すると、日本の安全基準はまだまだ甘いようです。原発のコストは安いと言われていたのは、はるか昔の話です(「原発の安全対策に5.2兆円 最安のはずが膨れるコスト」朝日新聞2020/8/9)。

 また、福島第一原発事故の被害を受けて県外に避難した福島県浜通りの住民が国と東電に損害賠償の支払いを求めて起こした裁判の判決で、仙台地裁は東電に対して住民77人に総額1.4億円の慰謝料の支払いを命じました。ふるさと喪失の慰謝料が認められましたが、国の責任は認められませんでした。避難者訴訟の一審判決としては17件目です。これまでの判決はすべて原告勝訴の判決となっていますが、国の責任の有無については判断が分かれています(「東電慰謝料を指針超に増額 国の責任は認めず 福島・浜通り古里喪失訴訟」河北新報2020/8/12)。

 最後に、青森県六ヶ所村の再処理工場について、先月、原子力規制委員会の安全審査に正式合格したというニュースがありましたが、今月は、25回目の工期の延期が発表されたというニュースがありました。新たな完成予定は2022年度上期です。当初の完成予定は1997年でしたから、とうとう4半世紀遅れることになったわけです。建設費も増え続けて、現時点で約3兆円です。こんな無茶苦茶なプロジェクトが今でも県内で推し進められているのです(「原燃、青森・六ケ所の再処理工場完工1年延期 25回目、安全対策に時間」河北新報2020/8/22)。

(2020.8.26 事務局)

会員からのメッセージ

 原子力規制委員会は29日、日本原燃の六ヶ所村再処理工場に対して、操業開始の前提となる新規制基準に適合しているという審査書を決定しました。

これにより、原子力政策の柱とされてきた『核燃料サイクル』の中核施設が、完成への手続きで大きな節目を超えたことになります。

しかしながら、規制委員会の更田委員長は会見で「核燃料サイクル全体の正当化は政策側の議論だ」という考えを示しています。

また、規制委員会が実施した一般からの意見募集にも574の意見が寄せられ、「巨大噴火のリスクが無視されている」「再処理事業は不要」などの意見が寄せられています。特に、日本原燃の技術能力を問題視した意見が多く寄せられています。これに対し、規制委員会の委員の中にも「これまでのトラブルを考えるとごもっともな意見が多い」などの発言があったそうです。

 六ヶ所村再処理工場は、原発で生じた使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出す施設で、政府がすすめる核燃料サイクルの重要な施設です。「核燃料サイクル」とは、原発で使い終えた核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、ウラン・プルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料などの形で核燃料に再生し、利用する計画のことです。

 再処理工場は海外でも繰り返し事故が発生しており、原発以上に未熟な技術と言われています。六ヶ所再処理工場でも、これまで、試験運転時にトラブルが続発したり、器機の保守管理の不備などが明らかになったりして、日本原燃の技術力のなさが懸念されています。

 そもそも日本で再処理工場を動かす必要はありません。

 プルトニウム利用を進める核燃料サイクル政策は、2016年の高速増殖炉「もんじゅ」の廃止決定により、政策そのものの破綻が決定的となっています。

 プルトニウムは原爆の材料となるものであり、日本は「利用目的のないプルトニウムは持たない」と内外に説明してきました。しかし現在、日本は原爆6000発分に近い約46トンのプルトニウムを国の内外に保有しています。

 プルトニウムを消費するために政府は、「もんじゅ」に代わり一般の原発でプルトニウムを消費するプルサーマルを推進しています。

 再処理工場がフル稼働すると年間8トンのプルトニウムが分離されます。

電気事業連合会は、これを消費するために16〜18基の原発でプルサーマルを目指すとしていますが、現在実施しているのは九州電力玄海原発など4基です。

 一方で、このプルサーマル計画では、行き場のない使用済みMOX燃料を発生させます。

再処理工場が操業すれば、原発と比べものにならないほどの放射性物質を日常的に排出することになります。

 再処理工場を操業させることは、事故のリスクを増大させるだけではなく、環境を汚染しながら不要なプルトニウムを増やし、国際社会の懸念を増大させることになります。

 プルトニウム利用路線は多くの点で破綻に陥っており、不必要な再処理のためにリスクを冒し、環境を汚染する必要はない、という声があがっています。

 3・11原発事故以来、原発の再稼働は難航し、電力供給における原発の割合は格段に小さくなっています。新規の立地も難しく、今後、古い発電所が廃炉になるにつれて原発の存在感は薄れていく一方です。原発事故の不安をなくするためにも、脱原発の方向へ時代は進んでいきます。

 このように原発が先細りする時代に、核燃料サイクルの意義は極めて乏しくなっており、現に先進国の多くは、経済性がないとして早くに再処理から撤退してきています。

 繰り返しますが、政府は余剰プルトニウムの削減を公約しており、消費量を超えないよう再処理する量を抑えざるを得ない状況があります。わずかなプルトニウムを取り出すために、総事業費14兆円の再処理工場を動かすのは割に合うことではありません。その費用が電気料金に跳ね返ることを思えば、国民の理解も到底得られるものではありません。

 もちろん、核燃料サイクルから撤退すれば、使用済み核燃料の処分など、これまで先送りして生きた難題に直面することになります。だからといってほころびの目立つ原子力に巨額の費用を投じ続けることでは、新たな時代を切り開くことはできません。

 世界的には、風力や太陽光などの再生可能エネルギーが急速に広がっています。今こそ政策転換を決断しなければならない時です。みんなの力で、その決断を政府に迫っていこうではありませんか。

2020.8.24  弘前年金者組合書記長 田中寿太郎)

青森県知事に決議文を提出し、県の原子力政策に対して要請を行いました。(2020年8月18日)

 2020年8月18日、青森県庁で、私たちの会は青森県の原子力行政に関する要請を行いました(トップページ参照)。私もこの会の副代表として要請行動に参加しました。

 私が印象深かったことは、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の文献調査に北海道の寿都町長が手を挙げたことに関して最終処分地の話に及び、青森県には高レベル放射性廃棄物を30年から50年貯蔵することになっているが、すでに最初に返還された高レベル放射性廃棄物(1995年搬入)は25年たち、今後最終処分地を決めるのに文献調査、概要調査、精密調査に20年かかり、その後建設に数十年かかることを考えると、青森県から30年から50年たっても搬出できず結局は六ケ所にとどめおくのではないかという心配があるという話に対して、最初の調査の期間の20年というのは「あくまで目安であって」と、心配することはないといわんばかりのコメントには、県民の心配をよそにずいぶん都合のいいとらえ方をしているんだなと驚きました。

 また、もう一つ驚いたことは、原子力規制委員会から新規制基準に適合した中に、防護設計があり、F35やF16などの戦闘機が落下しても耐えうる設計になっているが、大型旅客機などがテロで突っ込まれた場合の防護設計にはなっておらず、消火設備など資機材で対応することになるとまことしやかに話し、テロ対策はそんな程度の物でも合格したということにあきれました。県民の安全を願うのならば工事を中止し、破綻している核燃サイクルから撤退するしかないと改めて感じました。

 今回の申し入れは、市民の思いをぶつける大事な行動だったと思います。ご苦労様でした。

(2020.8.22 安藤はるみ))

原発・核燃問題の動き(2020年7月)

 六ヶ所村の再処理工場について、原子力規制委員会は安全対策の基本方針に関する審査書を正式に決定しました。安全審査に「正式合格」ということです。2021年上期の完成が現実味を帯びてきました。地元の方を含めて、関係者のみなさんは喜んでいることでしょう。しかし、工事計画の審査等の作業が残っているため、予定どおりの完成は難しいかもしれないとのことです。そもそも、2016年に高速増殖炉もんじゅが廃炉になり、核燃料サイクルの開発が失敗に終わった状況で、何のために再処理工場の完成を目指すのでしょうか(「六ケ所再処理工場、新基準適合を正式決定 完成見通せず」朝日新聞2020/7/29他)。

 その直前、再処理工場では放射性廃棄物を19年間にわたって不適切に保管していたことが明らかになりました。本当に毎度毎度の情けないニュースです。日本原燃は「安全性に問題はない」と開き直っているとのことです。同じ月に安全審査に「正式合格」というわけですから、何の冗談かと思ってしまいます。まさにGOTOトラブルです(「原燃、放射性廃棄物を不適切保管 再処理工場で19年間、高線量も」東京新聞2020/7/13)。

 福島第一原発事故と関わって、電力各社は賠償金として2.4兆円を追加申請することになったそうです。賠償金は2016年に7.9兆円という数字が発表されていますから、合計10.3兆円になるものと思われます。これらは事故を起こした東京電力だけでなく、新電力を含めた電力各社がいわば連帯責任として負担することになっていますが、とどのつまり、私たち消費者が負担するということです(「電力大手、原発の賠償負担金2.4兆円を追加申請」日本経済新聞2020/7/17)。

 最後に、経産省は石炭火力の段階的縮小の方針を初めて示しました。今まで国はCO2削減のために原発が必要だと言いながら、CO2排出量が最大の石炭火力の増設・輸出を推し進めてきました。こうしたデタラメ政策がようやく曲がり角に差し掛かることになったわけです。まだまだ不十分な方針ですが、曲がり角を上手く曲がれるようにしっかりと監視していきたいと思います(「石炭火力、抑制姿勢に転換 欧州「全廃路線」と一線」日本経済新聞2020/7/3)。

(2020.7.30 事務局)

原発・核燃問題の動き(2020年6月)

 今月は、全国の大手電力会社の株主総会が開催されました。沖縄電力を除く9つの電力会社の株主総会で脱原発の提案が提出されましたが、すべて否決されたとのことです。毎年の恒例行事のようになっていますが、脱原発の声は少しずつ確実に高まっているようにも思われます。旧経営幹部の金品受領が明らかになった関西電力の株主総会では、新型コロナの影響の中、300人以上の株主が出席し、たくさんの批判的な提案や意見が出されたとのことです。脱原発の提案が採択される日もそれほど遠くないと期待したいところです(「電力大手9社、一斉に株主総会 原発不安、再稼働に理解広がらず」共同通信2020/6/25、「関西電力株主総会終了 取締役過半数を「社外」など議案可決」NHK NEWS WEB 2020/6/25)。

 福島第一原発事故と関わって、政府が、避難指示区域のうち除染をしていない地域でも、一定条件を満たせば避難指示を解除できるように準備を進めているとのことです。地元でも、一日も早く復興を進めたいという声と、急ぎすぎると被曝が心配だという声があり、対立が続いています。今回の動きは前者の声に配慮したものらしいですが、本当に除染しなくても大丈夫なのでしょうか(「福島原発の避難指示、未除染でも解除へ 国の責務に例外」朝日新聞2020/6/3)。

 また、福島第一原発事故で九州の各県に避難した避難者が国と東京電力に損害賠償を求めた訴訟で、福岡地裁は東電の責任を認め、避難者24人に490万円の支払い命じたとのことです。避難者側の勝訴とはいえ、国の責任は認められませんでした。また、賠償金もごくわずかです。避難者訴訟の一審判決は16件目で、同じような判決が続いていますが、こんなことで避難者の生活再建は可能なのでしょうか(「原発避難、東電に賠償命令 国への請求認めず 福岡地裁」日本経済新聞2020/6/24)。

 青森県では、六ヶ所村のウラン濃縮工場で放射性物質の漏出を防ぐための排風機が故障したとのニュースがありました。毎度のことながら、どうしてこんな故障が次から次へと起こるのでしょうか。事業者としての資格があるとは思えません(「ウラン濃縮工場で機器故障 青森・六ケ所村」産経新聞2020/6/26)。

(2020.6.30 事務局)

原発・核燃問題の動き(2020年5月)

 今月、六ヶ所村の再処理工場が原子力規制委員会の安全審査に「合格」したというニュースがありました。福島第一原発事故後、2014年から6年余りの月日をかけて、何度も不備が指摘され、再審査を繰り返し、ようやく合格にたどり着いたわけですから、関係者のみなさんの喜びもひとしおではないでしょうか。しかしながら、1993年着工、1997年完成予定のところ、24回の延期を繰り返し、いまだに未完成、建設費は当初予算7600億円のところ、2兆9000億円を超え、操業してもプルトニウムの使い道がなく、実際に操業できるかどうかが不明、ひとたび事故を起こすと地球規模の放射能汚染をもたらすと言われる巨大施設の建設が続けられていることは、もはや奇跡としか言いようがありません。現時点で2021年上期完成予定とのことですが、本当にこのまま完成してしまうのでしょうか(「日本原燃の再処理工場「合格」 稼働は21年度以降」日本経済新聞2020/5/13、「六ケ所の再処理工場、事実上合格 稼働は見通せず」河北新報2020/5/14他)

 新型コロナウイルスの感染状況は少しずつ落ち着いてきましたが、原発・核燃にもさまざまな影響をもたらしています。政府もようやく重い腰を上げ、原発事故の避難計画に感染症対策を盛り込むための検討を始めるとのことです。また、関西地方の住民が、事故時の避難所が3密状態になるとして、関西電力の高浜・大飯・美浜の3原発7基の運転差し止めを求める仮処分を申し立てたとのことです。実際、今のように感染症が問題になっているときに事故が起こらないという保証はどこにもありません(「原発事故の避難計画 感染症対策を検討へ 内閣府 新型コロナ」NHK NEWS WEB 2020/5/14、「“避難3密”原発運転停止求める」NHK NEWS WEB 2020/5/18)

 その他にも、全国の原発をめぐってさまざまな動きが見られました。今年2月に敦賀原発2号機の審査書類の中で断層データの無断書き替えがあったというニュースがありましたが、その無断書き替えが250箇所に上るということが明らかになったそうです。福島第一原発では、大勢の作業員が廃炉作業を行っていますが、作業員の被爆検査で31件の「替え玉」受検があったそうです。などなど。どうしてこんなにグタグタなのでしょうか(「原電の安全審査資料、調査データを250カ所超「変更」敦賀原発2号機」毎日新聞2020/5/23、「被曝検査で「替え玉」福島第1原発の作業員、31件」日本経済新聞2020/5/26)。

(2020.5.29 事務局)

コロナ禍の中の再処理「合格」

子力規制委員会が先日、日本原燃の再処理工場について規制基準を見たいしているとして、事実上「合格」としました。規制委員会の性格上、申請のあった原子力施設に対して「審査」を行い、「合格」としたことに、それ以上期待することは難しいのでしょうけれども、やはり日本の、いや世界の状況を考え、本当にプルトニウムを生産するためにの再処理が必要なのかどうかを大所高所から検討する組織が必要だと思います。日本でも高速増殖炉「もんじゅ」が破綻し、再処理してプルトニウムを作り出す理由はもはや、核の機微技術の温存以外に考えられなくなっています。今、世界は新型コロナウイルスと世界史的な戦いを強いられ、コロナ後の世界を模索中です。経済的にも相当大きな打撃を受けているに違いありません。その中にあって、日本だけが、いまだにこれまで通り再処理を始めようとしている姿は恥ずかしくさえ思います。コロナ後の経済復興のためには、再生可能エネルギーへの大転換が必要とも言われています。この新しい社会に再処理工場が必要なのか、切り離さずに真剣に考えて欲しいものです。

(2020.5.28 宮永崇史)

原発・核燃問題の動き(2020年4月)

  新型コロナウイルスが猛威を振るっています。玄海原発や柏崎刈羽原発で関係者が感染したり、福島第一原発で廃炉作業の縮小が検討されたり、全国の原発もさまざまな影響を受けているようです。原発の関係者の方々にも感染防止と健康管理には十分に気を付けて頂きたいと思います。それにしても、こんなときに地震や台風やテロなどに見舞われても、原発の安全性は維持できるのでしょうか。もともと原発は複合災害に弱いと言われてきました。感染症も原発の安全性を脅かす要因にならないのか、慎重に検討する必要があるのではないでしょうか(「玄海原発の工事関係者が感染 工事中断に」NHK NEWS WEB 2020/4/15、「福島第1原発の廃炉作業 東電が縮小検討」2020/4/17、「新潟 柏崎刈羽原発 工事80%ほど縮小へ 社員らの感染で」2020/4/27)。

 今年2月に女川原発2号機が安全審査に合格しましたが、これを受けて河北新報が宮城県内で世論調査を実施したとのことです。その結果、宮城県全体で再稼働反対が61%に上ったものの、地元女川町のみでは賛成が56%に達したとのことです。最も大きなリスクを負う地元が、最も大きな恩恵を受けているという構図は、青森県を含めて全国共通の構図ですが、考えさせられるものがあります。福島第一原発事故の周辺自治体も、最も大きなリスクを負いながら、最も大きな恩恵を受けていたからです。その結果、何が起こったかということをよくよく考えて頂きたいものだと思います(「女川2号機「再稼働反対」61% 原発安全性「不安」74% 本社世論調査」河北新報2020/4/16、「地元同意「宮城県と県内全自治体」60% 女川原発2号機再稼働 世論調査」河北新報2020/4/16)。

 青森県では、日本最大規模の風力発電所が運転を開始したという明るいニュースもありました。つがる市の「ウィンドファームつがる」です。こんなに再生可能エネルギー資源が豊かな青森県にどうして原発や核燃が必要なのでしょうか。核燃マネーはやがて必ずなくなります。将来を見据えて、青森県内でもエネルギー政策の転換が必須です。ただし、これらの発電所は県外の事業者が設置したものなので、その利益の大半は県外に流出していきます。それらが地元自治体の固定資産税だけでなく、地域の自立化と活性化につながるかどうかが本当に重要な問題です(「日本最大規模、121MWの風力発電所「ウィンドファームつがる」が運転開始」環境ビジネス2020/4/7)。

(2020.4.28 事務局)

原発・核燃問題の動き(2020年3月)

 福島第一原発事故から10年目を迎えました。今月、福島県では、双葉町、大熊町、富岡町の一部で避難指示が解除されました。しかし、いずれも駅前等のわずかな区画にすぎません。また、これらに伴いJR常磐線が全線で復旧し、9年ぶりに浜通りを列車が往復するようになりました。しかし、今回復旧した浪江−富岡間を利用する乗客はわずかとも聞いています。福島県浜通りは少しずつ復興に近づいているとは言え、本格的な住民の帰還に向けてはまだまだ困難な課題が山積しています(「双葉町の一部、初の避難解除 22年春の住民帰還目指す」河北新報2020/3/4、「大熊・大野駅前の避難解除 常磐線全線再開へ環境整う」河北新報2020/3/5、「夜ノ森駅周辺を避難解除 福島・富岡町の帰還困難区域で初」河北新報2020/3/11、「震災から9年 JR常磐線 全線で運転再開」NHK NEWS WEB, 2020/3/14)。

 福島第一原発の避難者訴訟の判決も3件出ました。まず、北海道に避難した人たちが国と東電を提訴していた裁判で、札幌地裁は国と東電の責任を認め、慰謝料の支払いを命じました。これで避難者訴訟の判決は15件目、すべて原告勝訴です。あとの2件は初の控訴審判決です。仙台高裁は一審判決支持した上で、福島県の避難区域等の住民への損害賠償の増額を命じました。ところが、東京高裁は福島県南相馬市の住民への損害賠償を1/3に減額しました。これはあまりにもひどい判決です(「原発事故、国の責任認める 札幌地裁「津波予見できた」」朝日新聞2020/3/10、「原発事故で故郷喪失 仙台高裁も東電に賠償増額命じる」朝日新聞2020/3/12、「原発事故避難者訴訟 2審は賠償額3分の1に 東京高裁判決」毎日新聞2020/3/17)。

 青森県では、東京電力が今年も東通村に2億円を寄付すると報じられました。東電は超がつく金欠ではなかったのでしょうか。六ヶ所村の再処理工場の敷地内では火災があったそうです。相変わらずです。こんなことで再処理工場を安全に操業できるでしょうか。むつ市議会では中間貯蔵施設の操業を見越して、使用済み核燃料に課税する条例がスピード可決したそうです。県や事業者は反発しているそうです。核燃マネーの奪い合いみたいで、みっともないですね(「東電、原発計画の東通村に2億円寄付」日本経済新聞2020/3/4、「建屋内でぼや 再処理工場 青森・六ケ所」河北新報2020/3/22、「むつ市議会、核燃税条例を可決」2020/3/28)。

 そうした状況の中、全国の宗教関係者のグループが六ヶ所村の再処理工場の操業差し止めを求めて、日本原燃を東京地裁に提訴しました。再処理工場のリスクや処理費用の負担を後世に押しつけていけないとのことです。その通りです。他にも、青森県内では1988年以来「1万人訴訟原告団」が核燃料サイクル施設の設置許可取り消しを求めて裁判を続けています。再処理工場の操業は来年上期に迫っています。あらゆる手段で食い止めたいものです(「核燃料再処理工場 操業差し止め求め提訴 仏教など宗教関係者ら」河北新報2020/3/9)。

(2020.3.31 事務局)

原子力の本質

 原子力発電あるいは核燃料廃棄物の再処理を考える上で、原子力の本質を考えることは重要である。化学反応が地球上いたる所で見られるのに対し、原子核反応は地球上にはほとんど見られない。それだけ、原子核は安定であるということであり、そこからエネルギーを取り出せた場合にはより高いエネルギーを取り出せることになる。化学反応を熱に換算するとせいぜい2,000℃以下であるが、原子核反応はその10,000倍にも達する。この桁外れのエネルギーがこれまで人類を魅了してきた。しかし、この莫大なエネルギーを直接手に入れることはできず、結局は水を沸騰させてタービンを回すという蒸気機関であり、効率が悪い。熱機関の効率は30%が限度で、原子力発電で生み出される総エネルギーの2/3を海に捨てていることになる。一方、これまでに人類が経験したように、原子力事故が起こったときの危険は莫大である。アメリカの環境学者エイモリー・ロビンズ氏は「原子力発電は、電動ノコギリでバターを切るようなものだ」と評している。化学反応しか扱ってこなかった人類が、同じ方法で原子核反応を制御しようとするところにこの発電方法の最大の難点がある。したがって、原子力発電や再処理は、我々人類のあまりにリスクが大きい不必要な技術であり、1日も早く破棄されるべきではないだろうか。

(2020.3.31 宮永崇史)

3.11を迎えて(2020年3月)

私は、原発・核燃に関する知識が乏しく、勉強不足ではありますが、東日本大震災で津波を体験し、自然の強さ、恐ろしさを身をもって感じました。人間がつくったものなど、簡単に破壊してしまうのです。しかし、自然には決して逆らえません。したがって、どんなに安全だと言ってつくっても、確実な保証はないのです。リスクとしては大きすぎる原発・核燃に、これからも皆さんと一緒に反対していきます。

(2020.3.31  工藤由希子)

原発・核燃問題の動き(2020年2月)

  今月、福井県の敦賀原発2号機の安全審査の中で断層データの書き替えがあったというニュースがありました。日本原子力発電が活断層の有無を調査した際の観察記録を無断で書き替えていたそうです。生データの改ざんです。ちょっと信じられません。STAP細胞の事件を思い出します。同社は「悪意はない」と言い訳しているそうですが、原子力規制委員会は激怒しているようです。日本原子力発電は敦賀2号機が再稼働できないと会社の存続に関わるだけに必死なのでしょう(「敦賀原発の断層「生データ」無断で書き換え 日本原電」朝日新聞2020/2/7)。

 他方、宮城県の女川原発2号機が安全審査に合格したというニュースもありました。昨年11月に了承された審査書が正式に決定したということです。安全審査に合格した原発は、全国で16機目、東北地方では初です。東北電力は女川原発の安全対策工事のために3400億円もの費用(私たちが支払った電力料金)を投入してきましたから、不退転の決意で再稼働まで突き進んでいくでしょう。福島県のお隣で、とうとう原発が再稼働するのでしょうか(「女川原発、新基準「適合」を決定 再稼働は21年以降に」朝日新聞2020/2/26)。

 その福島県では、中通り地方の住民たちが福島第一原発事故の精神的被害の賠償を求めていた裁判で、福島地裁が訴えを認め、東京電力に国のガイドライン上回る賠償金を支払うことを命じる判決を出しました。避難者訴訟の判決は14件目で、すべて原告勝訴となっています。また、福島県沖で漁獲されるすべての水産物について、出荷制限が解除されたとのことです。福島県は苦しみながらも、少しつづ復興に向かっています。間もなく原発事故から丸9年です(「福島・中通り原発集団訴訟で東電に賠償命令 福島地裁判決」河北新報2020/2/19、「福島の全魚種が出荷可能に 本格操業へ議論に弾み」河北新報2020/2/26)。

 我が青森県では、大間原発の消防車が火事を起こしたりする中、むつ市の中間貯蔵施設のプラント審査が終了したそうです。また、六ヶ所村の再処理工場のプラント審査も最終局面を迎えたそうです。何があってもどんどん進むという感じです。地元も大歓迎です。青森県は別世界です。何事もなければ、再処理工場は来年上期に操業します(「青森・大間原発で消防車半焼 電熱線付近燃える」河北新報2020/2/3、「中間貯蔵施設のプラント審査終了 補正書年度内提出へ」河北新報2020/2/18、「再処理工場規制委審査 プラント分野、最終局面」河北新報2020/2/19)。

(2020.2.28 事務局)

原発・核燃問題の動き(2020年1月)

  今年最初の1ヶ月間、伊方原発(愛媛県)をめぐるニュースが世間を騒がせました。まず、定期点検中の伊方原発3号機で制御棒が誤って引き抜かれるというトラブルが発生しました。制御棒を引き抜くと核分裂反応が加速します。今回は1本だけだったので、放射能漏れはなかったとのことですが、とんでもない話です。翌日、その原因も解明されないうち、同じ伊方原発3号機でMOX燃料の取り出しが始まりました。使用済みMOX燃料の取り出しは全国初で、その行き先は決まっていないとのことです。無責任な話です(「伊方原発 核分裂反応抑える「制御棒」1体を誤って引き抜く」NHK WEB NEWS 2020/1/12、「行き先ないまま…使用済みMOX燃料、全国初の取り出し」朝日新聞2020/1/13)。

 その後、広島高裁で伊方原発の運転差し止めを命じる仮処分が決定しました。四国電力の想定を過小評価とし、中央構造線断層帯に関連する活断層の存在と阿蘇山の巨大噴火のリスクの認めたものです。このため、伊方原発は定期点検が終わっても、山口地裁岩国支部で係争中の本訴の判決がでるまで再稼働できないことになりました。リスクの存在を排除できない原発を停止するのは当然だと思われるのですが、四国電力は「到底承服できず、速やかに不服申し立ての手続きを行う」等と述べて大変憤慨しているそうです(「伊方原発3号機、運転差し止める仮処分決定 広島高裁」朝日新聞2020/1/17、「伊方原発差し止め「到底承服できない」四電コメント」朝日新聞2020/1/17)。

 ところが、その後、伊方原発はクレーンで燃料集合体を引き上げる際に接触事故を起こしました。さらに1号機〜3号機が一時的に電源喪失に陥るという大変恐ろしいトラブルを起こしました。これらを受けて、四国電力は定期点検を中止するとともに、先の仮処分に対する異議申し立てを当面見送ることにしたようです。この体たらくは何なのでしょうか。この間、わが国では、「世界最高水準の安全基準をクリアした原発」が次から次へと大小のトラブルを繰り返しています。こんな原発に再稼働されてはたまったものではありません(「伊方原発3号機、定期検査中にまたトラブル 燃料集合体がラック枠に接触」毎日新聞2020/1/20、「伊方原発で一時電源喪失 放射性物質漏れはなし」NHK NEWS WEB 2020/1/26)。

 他方、青森県については、平成28年度の六ヶ所村の1人あたり所得が1656万円で、県内1位だったというニュースがありました。もちろん、1人あたり所得は個人の平均所得ではありません。人口1万人ほどの小さな村の所得に日本原燃の企業所得が加算された結果です。この村の体質を象徴しているかのようです。なお、この件は毎年6月頃に流れる恒例のニュースとなっていましたが、青森県市町村民経済計算の公表が半年以上遅れたことから、この時期のニュースになったようです(「1人当たり市町村民所得、六ケ所が1位」朝日新聞2020/1/21)。

(2020.1.30 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年12月)

 今月、福島第一原発事故をめぐる避難者訴訟の13件目の判決が山形地裁で言い渡されました。判決は東京電力の責任を認め、損害賠償の支払いを命じました。原告勝訴です。しかし、勝訴とは言え、原告734人が約81億円の賠償を求めたことに対して、すでに十分な賠償金が支払われているとして、原告のうち5人に計44万円の支払いを命じたにすぎません。ほぼゼロ回答です。こんなにひどい判決は初めてです。これまでの多くの判決では、単なる生活費の補償だけでなく、仕事や家族や故郷や人間関係などを奪われたことに対する賠償が認められています(「原発避難者訴訟、国の責任認めず 東電の責任は一部のみ」朝日新聞2019/12/17)。

 福島第一原発事故の関係では、廃炉工程表が2年ぶりに改訂されたというニュースもありました。この間、廃炉の作業はトラブルが続き、思い通りに進んでいませんでした。原子炉内のデブリ取り出しの開始時期は、当初予定の2021年度から前回の改訂で2023年度に、今回の改訂で2024年度以降に先延ばしになり、1号機で最大5年先延ばしすることになったとのことです。今のところ、廃炉には30〜40年の月日と8兆円の資金が投入されることになっていますが、この先どうなるのか予断を許しません(「核燃料取り出し開始、最大5年遅れ 福島第一工程表改訂」朝日新聞2019/12/27)。

 青森県では、東北電力がつがる市沖で計画が進む「つがる洋上風力発電事業」に参入することになったという多少明るいニュースもありました。東北電力には、いい加減、女川原発や東通原発の再稼働のために無駄な費用(私たち電力使用者の負担になります)を投入することを止めて、青森県の地域の発展と自然環境の保全に十分に配慮しながら、青森県の再生可能エネルギー資源の開発にますます本腰を入れて協力して頂きたいものだと思います(「つがる沖風力発電 東北電が参入発表 県内洋上では初めて」朝日新聞2019/12/19)。

(2019.12.28 事務局)

「高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会」に参加して

 2019年も押し詰まる12月22日(日)に、弘前駅前ヒロロにおいて、「高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する対話型全国説明会」に参加した。参加申し込みの時点で、どのような話を聞きたいか書く欄が設けられていたので、「青森県知事は日本政府に対し青森県を決して最終処分地にしないと確約しているのに、どうしてその説明会を青森県内で行う必要があるのか?」という質問を書いた。説明会の冒頭その質問に関する回答があり、「以前、高知県の東和町が最終処分地の調査に名乗りを上げた際に、すぐに住民の反対があり、話が立ち消えになってしまったことの反省の上に、全国各地で例外なく説明会を開催している」との回答があった。あまり的を得た回答とは思えないが、その場はそれで治った。

 説明会で話された内容は私にとっては耳慣れた内容で、それほど新しい知識は得られなかったが、他の参加者には興味ある内容であったかもしれない。その中で、最終処分地となったところの将来の予想イメージが映像化され、最初のうちは国家プロジェクト的な建物が立ち並び、世の中の役に立っていると一目でわかることになっているが、100年もすると全くの原野になり、そこに何があるのか想像することは難しいのに異様な感じがした。

 私の友人が指摘するように「最終処分地の上に首都を移転するくらいのことをしなければ、最終処分地であることすら忘れられてしまう」と言うことが現実味を帯びてきた。

(2019.12.25 宮永崇史)

第31回市民講座会場アンケートから

(以下に、当日の会場でのアンケートの抜粋を掲載します)

 

●今日の話はいかに原子力発電が大切か、という内容だった様に感じました。思っていた内容と違ったのは私の勝手な期待だったのでしょうか。雇用が生まれた、言っていたけれど六ケ所村に行ったときに殆んど人が歩いていない。子どもの姿が無い。家はあっても住む人がいない。これで本当に雇用が生まれたといえるのでしょうか。

 

●19051930 石油・石炭の話

 19301945 原発・核燃の話

 19451955 エネルギーミックスの話

 19552000 青森県内の原子力施設(概要のみ)

 これはひどい!

 

●県の職員、しかも立場のある担当職員が、なんら問題意識なく、今回のような「問題への取り組み」というタイトルでの講話に参加、説明をしようと思ったのか不思議。原子力立地対策課の副参事から、そもそもの立地のなりたちを聞けない(知らない)のもとても残念でした。

 

●エネルギー自給率は原子力エネルギーではあがらないと思う。原子力に使っているお金を再生可能エネルギーに使ったらどれだけ、すごいことになっていたか。

 

●今日のような講座内容が繰り返し全県で行われているのはとても容認できないと思います。○○先生が言われたように、今日のお話し、肝腎なところに辿り着くまでが長すぎる。高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター隣接市町村住民の安全確保に関する協定書が本当に守られるように、県にはしっかり立ち回ってもらいたいと改めて思いました。

 

●出前トークなので、どのような話になるのかと思い参加しました。目新しことはありませんでしたが、国、県の説明の在り方(方向性)は、私たち国民(市民)の命に思いを馳せることに欠落していると再確認しました。「原発いらない」の運動に参加し、実現するまで続けていこうと心から思います。

 

●今回の設定は、当会についても企画の責任があるのではないか?

トークの前に説明会の要点をつき合わせたらもう少し煮詰まった内容になったと思います。

 

●こうした催しの場合は、まず主催者側が、トークの内容をそれなりに予測して、論点を絞った統一的な質問をするべきだ。時間の無駄使いになってしまう。

 

第31回市民講座(12月19日)感想

 第31回市民講座は、2019年12月19日(木)、弘前市民会館で開催されました。今回は青森県庁出前トークで、担当職員の方が「青森県の原子力施設の立地状況」について解説して下さるということでした。大いに期待して参加しました。担当職員の方々しか知らないようなことがたくさんあるのではないか、そんな話をいろいろと聞かせてもらえるのではないかと思ったからです。

 しかし、期待外れでした。1時間近くのお話しのうち、ほとんどが石油・石炭を含めたごく一般的な基本的なエネルギーの話で、肝心の「青森県の原子力施設」の話は最後の5分間程度で、それも六ヶ所村に再処理工場が建設中であるとか、青森県民だったら誰でも知っているような内容にすぎませんでした。レベルが低いことを別にしても、いくら何でも看板に偽りありです。景品表示法違反です。青森県消費生活センターに相談しようかと思っています(冗談です)。

 その後の質疑応答の時間では、多くの参加者が青森県の原子力問題への取り組みについて質問したり要望したりしましたが、職員の方の回答はうわべだけの当たり障りのないものばかりで、満足できるものではありませんでした。福島第一原発事故の経験を踏まえて、原子力問題にどのように対処するべきか、万が一の事故が起こったときにどのように県民の命や生活を守るのか。青森県の姿勢がまったく理解できませんでした。

 とはいえ、講師としてお出で頂いたお二人の職員の方は一所懸命にお話しして下さいました。核燃推進の自治体の職員が反対運動の集会で話をするというのは辛い役割だったと思います。話の内容は出前トークのメニューとしてあらかじめ決まっているようですし、県庁の担当職員として話している以上、県の立場から離れて自由に話をすることができないのも仕方がありません。お二人の責任ではありません。お二人には感謝しています。

 それにしても、原子力問題のような重要な問題について、賛成する人も反対する人ももっと率直議論し合えるような環境を作ることが県庁の責務ではないのでしょうか。しかしながら、せっかく出前トークを依頼しても、青森県は県民をコケにしたような話をしてお茶を濁して誤魔化そうとしているようにしか思えません。そんなところから変わっていかないと、青森県は原発・核燃を進めるにせよ止めるにせよ、将来に禍根を残すことになるのではないでしょうか。

(参加者・匿名)

原発・核燃問題の動き(2019年11月)

 ローマ教皇が38年ぶりに来日したことが大きなニュースになりました。被爆地である広島と長崎を訪問し、「深く胸に刻まれる体験だった」と述べながら、核兵器に依存した現在の国際政治のあり方を強く批判したとのことです。原発についても、チェルノブイリや福島第一原発の事故に触れながら、「完全に安全が保証されるまでは利用すべきではない」と明言したとのことです。事故後の福島県民の苦しみを知っている人であれば、誰でも教皇の発言に同意するでしょう。しかしながら、わが国の政府首脳たちは相変わらず馬耳東風という感じです(「ローマ教皇「原発やめるべき」 安全の保証必要と明言」日本経済新聞2019/11/27他)。

 福島県では、福島第一原発のオフサイトセンターの解体が始まったとのことです。万が一の事故の際に対策の拠点になるはずでしたが、事故発生の4日後に放棄され、その役割が果たせなかったという原発事故を象徴する建物です。また、福島県産のモモの輸出額がようやく事故前の水準に回復したというニュースもありました。あの事故から8年半が過ぎました。しかし、いまだに避難生活を強いられている方も大勢いますし、汚染水の問題も迷走しています。まだまだ課題山積です(「事故4日後に放棄 福島第一原発オフサイトセンター 解体始まる」NHK NEWS WEB 2019/11/25、「福島県産モモ19年度輸出、原発事故前水準に 規制解除進む」河北新報2019/11/25)。

 他方、青森県では、三沢基地所属の米軍機が六ヶ所村の南小学校・第二中学校の近くに誤って模擬弾を落下させました。それだけでも十分大変ですが、小中学校の近くに誤って模擬弾を落下させることがあるということは、再処理工場のど真ん中に誤って実弾を落下させることもあるということではないかと思ってします。ところが、その数日後、三村申吾知事は梶山弘志経済産業相と会談し、核燃料サイクル政策を推進するよう陳情を行ったことです。もはや恒例行事ですが、この時期にそんな話をするとはどういう神経なのでしょうか(「青森・六ヶ所に模擬弾落下 米軍三沢基地のF16」河北新報2019/11/8、「経産相「推進方針に変わりない」核燃料サイクル政策巡り」東京新聞2019/11/11)。

(2019.11.28 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年10月)

  今年9月の終わりに、関西電力の役員20人が、原発立地地域の福井県高浜町の建設会社から同町の元助役を通して3億円分の金品を受け取っていたというニュースが飛び込んできましたが、この問題の影響が広がっています。当初、八木誠会長、岩根茂樹社長、森中郁夫副社長たちは「一時的に保管していただけ」などと言い訳をして続投の意向を示していましたが、批判の声が高まる中、結局、辞任することになりました。岩根社長は、電気事業連合会の会長と日本原燃の会長も辞任することになりました。彼らが元助役から金品を受け取っていた時期、関西電力から高浜町に35億円の寄付が行われていたことなどが明らかになっています。原発への信頼がまたまた大きく揺らいでいます。恐らく、こんなことは青森県を含めて全国の立地地域で当たり前のように行われてきたのでしょう(「関電会長ら7人辞任 金品受領「信頼を失墜」」朝日新聞2019/10/10他)。

 他方、東京電力は東海第二原発(日本原子力発電)の再稼働に向けた安全対策工事の費用3500億円のうち、少なくとも2200億円を支援することになりました。日本原電にとって、運転期間40年超の東海第二原発の再稼働は会社存続のために絶対必要とのことですが、周辺自治体の同意が得られそうにない情勢だと言います。東京電力は福島第一原発事故の廃炉や賠償に負われているとき、こんな原発に莫大な資金援助を行うとは、どういうつもりなのでしょうか(「再稼働見通し立たぬまま 東電、原電に2千億円超支援へ」朝日新聞2019/10/28)。

 また、福島第一原発事故の賠償金4億8000万円を詐取したグループが摘発されたというニュースもある意味衝撃的でした。避難区域でも多くの空き巣被害が発生してるようですが、本当に深刻な被害を受けて苦しんでいる人が大勢いるときに、そうした状況に乗じて楽してボロもうけしようという人たちがいるのですね。許せません(「原発事故賠償金 詐欺グループ摘発 被害額4億8000万円か」NHK WEB NEWS 2019/10/25)。

 青森県内では、原子力規制委員会が六ヶ所村の再処理工場の現地調査を終了しました。今後、火山の影響や活断層の有無について、最終的な議論に入るとのことです。何だかんだと言って、事業者である日本原燃にとって都合の良い結論が出てしまうようのではないかと心配です。再処理工場の完成予定は(今のところ)再来年2021年上期とのことです(「六ケ所村再処理工場審査で規制委が現地調査 断層評価を検証」河北新報2019/10/4他)。

(2019.10.31 事務局)

第30回市民講座(2019年10月17日)感想

 今回の市民講座では、弘前大学の大谷伸治さんによる講演「戦後政治と「原子力の平和利用」-なぜ被爆(曝)国の日本が原子力開発を始めたのか?-」が行われた。歴史研究の立場から、被爆国日本が原子力の平和利用に突き進んでいく様子が、戦後「55年体制」との関わりの中で議論された。

1945年、広島、長崎に原爆投下され、1954年ビキニで被曝、そのあとに原子力の平和利用が進められている。原子力の平和利用は、自民党、社会党、共産党も全部一致で進めていく方向だった。平和利用が夢のような宣伝で進められて来た。今となっては、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島と大きな事故で核の利用は、人間の手に負えないものになっていると思う。自民党は考え方を変えていく必要があると思うけど、可能性は低い。私たちは核を持ちたい国にNoと言わなければならないと思う。

 

(2019.10.25 平山母志子)

原発・核燃問題の動き(2019年9月)

 今月も原発・核燃をめぐってさまざまなニュースがありましたが、とくに注目するべきものは次の3件であるように思われます。

 第1に、原田義昭・前環境相兼原子力防災担当相が、内閣改造による退任直前に、福島第一原発の汚染水の処理について「海に放出するほかに選択肢がない」と発言したことです。汚染水を希釈して海に放出しても「科学的に安全である」とのことですが、汚染水に含まれるトリチウムの影響はまだ十分に解明されていないそうです。仮に本当に安全であったとしても、風評被害の問題にきちんと対応できるのでしょうか。そんなことで福島の漁業者が苦しんでいるときに、退任前の大臣はどういうつもりで発言したのでしょうか(「福島第一原発の汚染水「海に放出以外ない」原田環境相」朝日新聞2019/9/10)。

 第2に、福島第一原発事故を起こした東京電力の旧経営陣(勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長)の刑事責任が問われた裁判で、東京地裁が無罪判決を出したことです。東電社内で「最大15.7メートルの津波」の可能性が指摘されながらも、経営陣がそれを重視しなかったのは当時としては仕方がなかったとのことです。原発は安全だと吹聴し、原発建設を推進しながら、必要な安全対策を行わず、大変な事故を起こした組織の責任者に、刑事責任が何もないということで良いのでしょうか(「東電旧経営陣3被告に無罪判決 福島第1原発事故で東京地裁」毎日新聞2019/9/19)。

 第3に、関西電力の役員20人(八木誠会長、岩根茂樹社長、豊松秀己元副社長他)が、原発立地地域の福井県高浜町の建設会社から同町の元助役を通して3億円分の金品を受け取っていたというものです。発電所等の建設を受注する建設会社の収入は、元をたどれば私たちが支払った電力料金です。本人たちは「一時的に保管していただけ」とか、「儀礼の範囲内を除いて返却した」とか、いろいろと言い訳しているようですが、よく分からないことだらけです。今後、調査や捜査が進んでいくことと思われます(「関電20人に金品3.2億円 岩根社長「一時的に保管」」朝日新聞2019/9/27)。

 その他、玄海原発2号機の廃炉のために35年の月日と365億円の費用がかかるとか、東海第二原発のテロ対策施設の建設のために610億円がかかるとか、原発のコストに関わるニュースもありました。原発には稼働前にも稼働後にも百億円単位の費用がポンポンと掛かるということが後から後から明らかになっています。かつてはこうしたコストが意図的に無視され、あるいは安全対策が軽視され、その結果、原発のコストは安いなどと言われていたわけですね(「廃炉まで35年間、費用は365億円 玄海原発2号機」朝日新聞2019/9/4、「東海第二原発のテロ対策施設、費用は610億円」朝日新聞2019/9/24)。

(2019.9.29 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年8月)

  先月末から福島第一原発事故に関わって気になる動きがいくつか見られました。

 福島第二原発の廃炉が正式に決定したことは大きなニュースの一つでしょう。第一原発事故以来、第二原発の廃炉は福島県民の悲願でした。県議会では4回も廃炉を求める意見書が採択されてきました。それでも東電は第二原発廃炉の判断を先延ばしにしてきました。それがようやく正式決定に至ったわけです。しかし、廃炉作業の完了まで40年以上かかるとのことです。長い道のりです(「福島第二の廃炉、東電が正式決定 全4基完了に40年超」朝日新聞2019/7/31)。

 また、東電が福島第一原発の汚染水タンクがあと3年で満杯になると発表したこともある意味衝撃的でした。現在、トリチウムを含む汚染水は100万トンを超えており、これを希釈して海洋に放出することが検討されています。当然、地元の漁業関係者は反対しています。そんな中で東電の発表は、3年後に海洋放出するぞと恫喝しているかのような印象を受けます(「汚染水タンク、あと3年で満杯 福島第一原発の敷地飽和」朝日新聞2019/8/8)。

 その他にも、福島県から中部地方に避難した人たちによる訴訟で、名古屋地裁が東電に慰謝料の支払いを命じたが、国の責任を認めなかったこと、東京都で避難生活を送り、国家公務員宿舎からの退去を拒んでいる人たちについて、福島県が提訴を検討していることなどが報じられました(「原発避難訴訟、国の責任認めず 9683万円支払い東電に命じる」毎日新聞2019/8/2、「自主避難者、公務員宿舎未退去 福島県が明け渡し求め提訴へ」河北新報2019/8/21)。

 他方、青森県では、北海道電力、中部電力、関西電力、中部電力の4社が共同でコールセンターを設置し、50人程度を新規採用することになったそうです。大規模災害に備えるとのことですが、電力会社は青森県にやたら優しいです。何か狙いがあるのでしょうか(「電力4社が初の共同コールセンター、大規模災害に備え」日本経済新聞2019/8/23)。

 また、六ヶ所村の再処理工場の安全装置が故障したとのニュースもありました。稼働すれば非常に危険な施設になるはずなのに、相変わらずトラブルが絶えません。トラブルが起こる方が正常なのでしょうか。日本原燃の「再発防止の徹底を図っていきたい」というセリフも本当に聞き飽きました(「再処理工場の安全装置が故障」NHK NEWS WEB 2019/8/26)。

(2019.8.28 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年7月)

 九州電力玄海原発の運転差し止め仮処分申し立ての抗告審で、福岡高裁が住民の申し立てを棄却しました。九州電力の「基準地震動の評価は合理的」、「破局的噴火が起きる可能性は極めて低い」などとする主張が認められたものです。先月も川内原発をめぐる行政訴訟の判決がありましたが、相変わらず、福島第一原発事故の反省が生かされない司法の判断が続いています(「玄海原発差し止め仮処分、住民側の抗告を棄却 福岡高裁」朝日新聞2019/7/10)。

 他方、原発の追加的安全対策の費用が4.8兆円に達するとのニュースがありました。福島第一原発事故を受けて新しい安全基準が導入された当時、総額で9千億円程度と想定されていたものが、あっという間に4兆円近く増えたことになります。大変な費用です。そして、私たちが電気料金を通して負担します。原発の発電コストのさらなる上昇に反映することも必至でしょう(「原発安全費、想定の3倍超す 関電・九電1兆円規模」日本経済新聞2019/7/9)。

 福島県では、東京電力が福島第二原発の廃炉をようやく正式に表明したようです。福島第一原発事故後、福島県と福島県民が求め続けてきたものです。福島県は名実ともに原発と手を切って新しい道を歩んでいくことになります。同時に、東京電力は福島第二原発の敷地内に使用済み核燃料貯蔵施設を新設することも表明しました。これがこの先どうなるのか、福島県の将来が心配です(「福島第2原発廃炉を正式表明 東電、核燃貯蔵施設新設へ」共同通信2019/7/24)。

 我らが青森県では、2014年6月に東北電力が東通原発の安全審査を申請してから5年が過ぎました。しかし、敷地内に活断層の存在が指摘されています。東北電力は何とか否定しようと画策してきましたが、未だに結論に達していません。そうした中で、東通村の財政は悪化の一途をたどり、村長のストレスも高まっているようです(「<東通原発>審査5年、なお序盤 直下断層巡り議論長期化 再稼働は先行き不透明」河北新報2019/7/13)。

 そうした状況と関係しているのでしょうか、同じ東通村に、東京電力が「青森県事業本部」を設置したとのことです。「停滞する東電東通原発の原子力事業を推進するほか、地域貢献を強化する狙い」とのことですが、どうなのでしょうか。原発建設を再開するまで、これで我慢してね、という感じなのでしょうか(「東電が東通に青森事業本部 70人体制で始動」河北新報2019/7/2)。

(2019.7.29 事務局)

第29回市民講座(2019年6月21日)感想

  核燃・だまっちゃおられん津軽の会の第29回市民講座が、去る6月21日に弘前市民会館大会議室で開催され、私も参加した。今回の講座は共産党県議の安藤晴美さんによる、「青森県の原子力施設の実態を探る~破綻した国策をあおる県政~」というテーマが設定されており、興味をそそられた。

実際の講演内容は、県内各地の核施設の現状を基本的な知識として押さえるには必要十分な情報の提供、ということで貴重なものだった。

   講演の冒頭、三村知事の姿勢について次のような言及があった。三村知事は「ベストミックスを図ることが重要」と、国の原発の発電比率を2022にするという方針を全面的に支持する立場であること。これはつまりどういうことかというと、「この発電比率の目標を実現するためには30基以上の原発を動かす必要があり、現在廃炉が決まっているものを除いたすべての原発を動かしても足りず、建設中の島根原発3号機や大間原発、建設計画の東京電力東通原発も動かす」必要があるということである。日頃、「国や事業者の進捗を注視する」という言葉しか発しない三村知事だが、実は、「県内の原発推進を願っている」のが本心だ、ということがお話の中で明らかにされ、なるほどと膝を打った。市民運動の立場からは、明確に「原発推進の三村」という位置づけでアピール内容を工夫していく必要があると改めて思った。

 「県内の原子力施設の現状」については、県議会での質疑から得た情報も織り込まれ、多くの県民が知識として押さえておいてほしい内容が満載だった。少なくとも、だまっちゃおられんの会員の基礎知識として身に着けておく必要があるだろう。以下、説明のあった核施設を掲載しておく。

1.東通原子力発電所

東北電力1号機、2号機

東京電力・ホールディングス1号機、2号機

2.大間原子力発電所

3.原子燃料サイクル施設

ウラン濃縮工場

低レベル放射性廃棄物埋設センター

中深度処分相当の廃棄物

再処理工場

高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター

低レベル廃棄物受け入れ・貯蔵施設

MOX燃料工場

4.使用済み燃料中間貯蔵施設(リサイクル燃料備蓄センター)

 これら核施設に対する県の姿勢・施策についても解説があった。

核燃料物質取扱税

電源三法交付金の交付実績

 三村知事の原発推進姿勢が明確に表れたものとして、民主党政権時代の使用済み核燃料の直接処分論に三村知事が激怒したエピソードも紹介された。

 そして最後に、野党が共同で提出している「原発ゼロ基本法案」が実現できる国会にしよう、と呼びかけがあった。

 核燃・だまっちゃおられん津軽の会が今後どのような運動展開をしていくのか、率直な議論をオープンに行うことが、今回の講演をより生かす道につながるように思える。そういう活動に今後期待したい。

 ちなみに、たまたま私は「青森県政を考える会」の会報を発行する立場にあるので、今回の講演内容は是非、2019年版「豊かな青森県政を語る4」に掲載させていただきたい。そして多くの県民に読んでもらいたいものだと考えている。

(2019.9.9 竹浪 純)

2019年度代表挨拶  宮永崇史

2019年度「核燃・だまっちゃおられん津軽の会」の代表となりました、宮永崇史です。よろしくお願いします。

 この会は12年前に、核燃料再処理工場の本格稼働を目前にして、なんとか危険な再処理を止めようと発足しました。その後、東京電力福島第一原発の事故が起こり、やはり原子力発電所も危ないのだという認識を新たにし、原子力問題を幅広く学び、その危険性や不合理性に気づき、原発の稼働や建設、再処理工場の操業に反対する運動を進めてきました。また、原子力発電に変わる再生可能エネルギーやそれに関わる青森県の経済についても学習を深め、様々な角度から青森県の原子力政策について学び、その阻止に向けて活動しています。一方で、県内の原子力施設立地地域では早急な原発再稼働、再処理工場の操業を求めています。青森県には、原発や再処理工場稼働の問題の他に、現実に六ヶ所村に溜まりつつある高レベル核廃棄物の問題もあります。県知事は青森県を核のゴミの最終処分地にしないとポーズは取っていますが、地元自治体の議員は「毒を食らわば皿までも」という気持ちだ、と最終処分地を認めざるを得ないと半ば諦めている人もいます。また、元科学技術庁長官の田中真紀子氏はテレビのインタビュー番組で「あんなもの(一旦六ヶ所村に運び込まれた高レベル核廃棄物)、動かせるわけないでしょう」と明言しています。核廃棄物の最終処分地に関する国による選定は一向に進んでいません。私たちは、この核のゴミの最終処分地問題にも関心を高めていかなくてはなりません。 

原子力問題についてのアンケートを取ると国民の半分以上が原子力発電や核施設は必要ないと答えるのに、なかなか表立った運動になっていないのが現状です。やはり市民が反対の声を上げないと、政府は動きません。私たちの会はそのような人々が堂々と反対を表明し、明るく活動することにより青森県ひいては日本の原子力施設をゼロにする運動を心がけています。どうかみなさんも仲間に加わり、未来の子供達に核のない世界を残しましょう。

(2019.7.9 宮永崇史)

第12回総会報告

2019年6月21日(金)18:00より第2回総会が開かれました。2018年度の活動報告では、特に学生と出かけた下北ツアーおよび青森県知事への要請について詳細に報告されました。2019年度方針に関わり、会場からは、県外の団体との交流など、より幅広く活動を広げてはどうかと意見がありました。その点を踏まえて、運営委員会で議論してゆきたいと思います。また、今年は4回の市民講座を計画します。運営委員会に久しぶりに若手の新委員が加わりました。

(2019.7.6 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年6月)

 日本政府は気球温暖化対策の長期計画を閣議決定しました。パリ協定により国連に提出することが義務づけられているものです。再生可能エネルギーを主力電源と位置づける一方、石炭火力や原子力の活用の余地を未練がましく残しているそうです。現在、日本は再生可能エネルギーの活用・普及をめぐる世界の動きに大きく遅れを取っています。いい加減、原発ときっぱりとお別れして、世界の動きに追いつくよう頑張ってほしいものです(「政府温暖化対策 今世紀後半に「脱炭素」原発・石炭火力は維持」東京新聞2019/6/11)。

 九州電力川内原発の設置許可について、住民等が取り消しを求めた行政訴訟の判決があり、福岡地裁は住民等の訴えを認めませんでした。福島第一原発事故後に策定された新規制基準に基づく原発の設置許可をめぐる集団訴訟の初の判決だそうです。福島地裁によると、「破局的噴火」等の極めて低頻度の自然災害が想定されていなくても不合理ではないそうです。しかし、福島第一原発事故は、千年の一度の大地震と大津波によって引き起こされたのではなかったでしょうか(「川内原発の設置許可取り消し認めず 福岡地裁判決」日本経済新聞2019/6/17)。

 今月、山形県沖で地震が発生しました。青森県も結構揺れました。もう日本中、どこで大地震が起こっても驚いている場合ではないでしょう。ところで、この地震の際、東京電力は停止中の柏崎刈羽原発で「異常」が発生したと周辺自治体に誤連絡し、自治体を驚かせたとのニュースがありました。迷惑な話で済めばまだマシです。正常な場合でも異常と誤連絡することがあるのなら、異常な場合でも正常と誤連絡することがあるのではないでしょうか(「「柏崎刈羽の原子炉設備に異常」東電、自治体に誤連絡」朝日新聞2019/6/19)。

 

(2019.6.23 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年5月)

 1979年にアメリカ史上最悪の原子力事故を起こしたスリーマイル島原発が今年9月に閉鎖されるとの報道がありました。「レベル5」の事故を起こした2号機は、現在までデブリの一部を残したまま監視状態に置かれていましたが、操業を続けていた1号機も天然ガスや再生可能エネルギーとの競争に勝てなくなり、とうとう閉鎖されるということです。時代の変わり目を感じさせる一方、「レベル7」の事故を起こした福島第一原発の1〜4号機の廃炉はこれからどうなるのかと考えてしまいます(「スリーマイル島原発、9月30日までに閉鎖へ」時事通信2019/05/09)。

 お隣韓国では、原発の出力が制限値を超えて異常な状態になったまま、長時間放置されていたとの報道がありました。法令違反で使用停止命令が出たが、事業者側は何やら反論しているそうです。韓国には24基の商業用原発があり、そのうち18基は日本海側にあるそうです。人ごとではありません。しかし、日本でも韓国でも原発事業者はいい加減な感じです(「原子炉に異常 11時間止めず 韓国原発、重大事故の恐れ」東京新聞2019/5/22)。

 我が国では、原発専門企業の日本原子力発電は2011年の福島第一原発事故以来、発電実績がゼロであったにも関わらず、この間の収入が1兆円近くに上るとの報道がありました。東京電力など大手電力5社が「基本料金」と称して電気料金を支払い続けているからだそうです。すべて私たちの支払った電気料金が元手です。とくに東京電力には(先月も書きましたが)そんな余裕がどこになるのでしょうか(「発電ほぼゼロで収入1兆円 日本原電8年間分」朝日新聞2019/5/23)。

 ちなみに、先月のニュースで、東京電力が福島第一原発の廃炉作業に外国人労働者を投入しようとしているとありましたが、その後、厚生労働省が安全管理を慎重に検討するよう要請し、東京電力は「当面の間、受け入れを認めない」との方針を明らかにしました。当然です。というか、将来にわたって認めほしくありません(「廃炉に特定技能外国人当面認めず」NHK NEWS WEB 2019/5/22)。

 

(2019.5.29 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年4月)

 先月のニュースのまとめで、東通村が国から交付金10億円を、東北電力から寄付金4億円を受け取ることを紹介しましたが、その後、東京電力からも企業版「ふるさと納税制度」による寄付金2億円を受け取ることになったと報じられました。東通村の財政を助けるためにこんなにお金が掛かるのでしょうか。それらの原資はすべて私たちが支払う税金や電気料金です。しかも、東京電力は国から借金しながら福島第一原発事故の賠償や廃炉などを進めているところです。何億もの寄付金を支払う余裕がどこにあるのでしょうか(「東電が企業版ふるさと納税で2億円、原発建設中断の村に」朝日新聞2019/3/29)。

 福島県では、大熊町の2地区の避難指示が解除されました。福島第一原発が立地する双葉町と大熊町の中では初の避難指示解除とのことですが、山間部の人気の少ない地区です。復興への大きな一歩ですが、まだまだ先は大変です。また、サッカー施設Jヴィレッジ(楢葉町・広野町)が全面的に営業を再開しました。これも復興への大きな一歩に違いありませんが、元々、東京電力が100億円かけて建設して福島県に寄付した施設であることを思い出すと複雑な気持ちになります(「<全町避難>大熊町が初の避難解除 2地区対象、町面積の38%」河北新報2019/4/10、「Jヴィレッジが全面再開、福島「サッカー聖地」8年ぶり」河北新報2019/4/20)。

 全国で原発の再稼働が進められているところですが、それらの原発では国の基準に定められたテロ対策施設が未だに設置されていません。この間、原子力規制委員会から猶予期間を認められ再稼働していたのですが、今回、テロ対策施設の完成が猶予期間内に間に合わないことが明らかになりました。電力会社は原子力規制委員会に泣きついているようですが、原子力規制委員会は間に合わないなら原子炉の停止を命令するとのことです。当然です。というか、電力会社は国を基準を守る気があるのでしょうか(「原発テロ対策施設 5原発10基で完成遅れ」毎日新聞2019/4/17、「対テロ施設、建設間に合わない 原発9基が停止の可能性」朝日新聞2019/4/19)。

 今月、外国人労働者の受け入れのための新制度がスタートしましたが、東京電力はこの制度を利用して福島第一原発の廃炉作業に外国人労働者を投入する方針であることが明らかになりました。日本の建設業界の人手不足が背景にあるようですが、日本人労働者にとっても大変な、厳しい被曝線量の管理が必要な労働です。知識や言語に不安のある外国人労働者を投入することが適切なのでしょうか。私たちの国の大失態の尻拭いを外国人の方にお願いするみたいで、何とも心苦しいです(「原発に特定技能外国人 東電、福島廃炉に受け入れ」朝日新聞2019/4/18)。

(2019.4.29 事務局)

 


2019 さようなら原発・核燃「3.11」弘前集会(2019年3月16日)

  今回の弘前集会では、ドキュメンタリー映画「沈黙しない人々~トルコ 原発との闘い~」が上映されました。映画ではトルコの原発反対の集会などが見られてよかったです。チェルノブイリ原発事故の被害がトルコでも大きかったというのがわかってビックリです。家族が7人も癌になり、さらにいとこも2人癌で闘っているというのを聞いて、癌の発生率がものすごく高いと思いました。福島の事故に思いを馳せ3.11に集会をやっていることに連帯感が感じられました。トルコの若者たち、ダンスもしながらデモを行っていて楽しそうに見えました。私たちも楽しくやりましょう。トルコ語でNOは「ハイヤー」、YESは「エベツ」、というのを覚えました。

(2019.4. 1 新婦人の会 平山母志子)

原発・核燃問題の動き(2019年3月)

今月3月11日で東日本大震災の発生から8年が過ぎました。

 福島第一原発事故の被災地域では、復興が進んでいるものの、いまだに多くの問題が解決に至っていません。新聞報道でも、避難者5万人の生活支援や生活再建、増え続ける汚染水や除染による汚染土の処理などが大きな課題となっていることなどが報告されています。膨大な費用をかけて除染した地域でも、地中や森林のセシウムが流出し、放射線量が上昇している事例もあるようです(「トリチウム含む処理水「処分必要」 東京電力、2年で保管限界」福島民友2019/2/24、「福島汚染土、県内で再利用計画 「99%可能」国が試算」朝日新聞2019/2/26、「震災8年、生活インフラ復興進む 避難者なお5万人」日本経済新聞2019/3/11、「原発事故で放出のセシウム 大半は森林の地中にとどまる」NHK 2019/3/13)。

 そんな中、横浜地裁と千葉地裁で避難者訴訟の判決がありました。両者とも避難者側の勝訴です。しかし、横浜地裁は国と東京電力の責任を認めましたが、千葉地裁は国の責任を否定しました。後者では賠償額もわずかです(1人当たり約50万円)。とはいえ、これで避難者訴訟の判決は全国で計9件となり、すべて避難者側の勝訴となっています(「東電と国に賠償命じる 「ふるさと喪失」原発避難者訴訟」朝日新聞2019/2/20、「東電にのみ4世帯9人への508万円賠償命令 国の責任認めず 千葉地裁・原発集団訴訟」毎日新聞2019/3/14)。

 東京電力の旧経営陣3人を被告とする刑事裁判は、今月、最終弁論を終えました。2002年の国の長期評価に基づいて、東電社内でも津波対策の必要性が検討されていたらしいのですが、勝俣恒久元会長を始め、旧経営陣の人たちは、津波を予見できなかったと主張しています。判決は今年9月です(「津波事故「予見可能性なかった」旧経営陣3人、無罪主張 東電強制起訴公判」毎日新聞2019/3/12)。

 青森県内のニュースでは、東通村が、国から電源立地対策費の特例措置として10億円を、東北電力から企業版「ふるさと納税制度」による寄付金として4億円を受け取るとのことです。東通村は村内の原発の再稼働・建設が滞っているため、財政的に窮地に立たされています。その救済策というわけです。まさに裏ワザです(「青森・東通村に特例10億円 電源交付金工事中断で救済」河北新報2019/2/27、「<東北電>企業版ふるさと納税で東通村に4億円 原発停止での財政難へ支援」河北新報2019/3/20)。

 六カ所村の再処理工場については、今月に入って、日本原燃が原子力規制委員会に最終補正書を提出し、安全審査が最終段階に入ったとのニュースがあったのですが、その後、再度(というか、再三、再四、再五というか)複数の問題点が明らかになり、もうしばらく審査が続くことになったとのことです。真面目にやる気があるのでしょうか(「再処理工場の補正書提出 合格証まとめ本格化」河北新報2019/3/9、「再処理工場追加審査へ 規制委、「合格証」草案公開」河北新報2019/3/21)。

(2019.3.22 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年2月)


 

 今回は2019年1月下旬から2月中旬にかけての原発・核燃問題に関する新聞報道にコメントします。

 まず、青森県内の何とも不思議なニュースが朝日新聞の全国面に載りました。むつ市の核燃料中間貯蔵施設の敷地に隣接する評価額715万円の原野が15億円で入札されたとのことです。全国の原発で使用済み燃料の置き場が足りなくなっており、むつ市の中間貯蔵施設についても関西電力が利用を画策しているという噂もあるところ、何かウラがありそうな気持ちの悪いニュースです(「評価額715万円が15億円…青森の原野に高額入札の謎」朝日新聞2019/1/24)。

 青森県内の動きでは、その他にも、六ヶ所村の再処理工場の安全審査が大詰めを迎えているというニュースが続いています。再処理工場は1993年に着工、2008年にアクティブ試験を開始したものの、これまで散々トラブルを繰り返してきました。昨年9月、ようやく原子力安全委員会の主要な審査を終えたものの、その後も複数の誤りが見つかり、今回、最終補正書の提出が近づいているとのことです。間違いがなければ、今年中に安全審査に合格するような段階です。操業予定は、現在、2021年上期とのことですが、こんなトラブル続きの施設を操業させても大丈夫なのでしょうか(「<原子力規制委>再処理工場審査大詰め 原燃、最終補正書提出へ」河北新報2019/1/29、「<再処理工場>審査書案取りまとめへ 規制委、事故対策の方針了承」河北新報2019/2/7他)。

 原発や火力に代わって、新電力による再生可能エネルギーの普及が期待されているところですが、関西電力が大口向けの電力で値下げ攻勢をかけて、新電力が苦境に陥っているとのニュースがありました。全国各地で、自治体等が主体となって新電力を設立し、地域に再生可能エネルギーによる電力を供給しています。関西地区では、新電力は官公庁向けに平均11.4円/kWhで電力を供給しているところ、関西電力は8.7円/kWhで供給しているとのことです。8.7円といえば、原発の発電コストよりもはるかに低い水準です。関西電力は家庭向けの電力供給で利益を確保しつつ、大口向けに原価割れした価格で電力を供給し、新電力を市場から排除しようとしているのです。社会の利益を犠牲にして自社の利益を確保しているというわけです(「自治体新電力が関西で苦境 関電値下げで」日本経済新聞2019/2/4)。

 お隣の北海道については、泊原発の消火設備が寒さで凍結したという笑うに笑えないニュースもありました。日本では暑い日も寒い日もあります。風が吹いたり、雨が降ったり、雪が降ったり、地震が起こったり、津波に襲われたりすることもあるでしょう。原発事故は天気の良い日に起こるとは限りません。世界最高水準の安全基準はどこに行ったのでしょうか(「泊原発 寒さで消火設備の一部が凍結し故障」NHK WEB NEWS 2019/2/10)。

(2019.2.25 事務局)

原発・核燃問題の動き(2019年1月)

 今月から、運営委員会で話題になった原発・核燃問題の動きについて、新聞報道に基づいてコメントしていきます。

 まず、核燃料サイクル政策の動きとして、高速増殖炉もんじゅの後継炉の開発計画が正式決定したとの報道がありました。21世紀半ば頃に後継炉が運転を開始するとのことです。もんじゅは2016年12月に廃炉になり、開発計画は完全に失敗に終わりましたが、それにも関わらず次の段階に進むというのです。もんじゅ失敗の教訓はどこにいったのでしょうか(「もんじゅ後継の高速炉工程表が正式決定 推進側の論理で」朝日新聞2018/12/21)。

 また、原子力施設の廃止に巨額の費用がかかることが明らかになったとの報道がありました。全国の原発と、日本原燃の施設、日本原子力研究開発機構の施設の廃止費用を合わせると6.7兆円、これに福島第一原発の廃炉費用を合わせると14.7兆円になるとのことです(「原子力79施設廃止に1.9兆円 費用は国民負担」毎日新聞2018/12/26、「原発関連廃止費用14.7兆円 高コストくっきり」しんぶん赤旗2019/1/22)。

 青森県関係では、洋上風力発電の可能性が広がっているとのニュースがありました。青森県は現在も風力発電の設備容量が日本一ですが、今後、最大で600基の洋上風車の計画があるとのことです。しかし、いくら発電所を作っても、その利益は県外の事業者のものになります。青森県の利益に転換する仕組みが必要です。ニュースでは、メンテナンス等で雇用創出効果が生まれるとされていますが、海上・海中の工事は難度が高く、容易ではないでしょう。それでも、核燃料サイクル基地よりは期待できそうです(「洋上風力発電 青森県内で最大600基計画」東奥日報2019/1/1)。

 福島県関係のニュースがいくつもありました。旧避難区域の児童・生徒数が福島第一原発事故前より著しく減少しているとのこと、東京電力が被災者との和解を打ち切る動きを加速させているとのこと、原発事故の際に11歳で100mSv被曝した疑いのある児童がいることが公表されてこなかったことなどです。原発事故が広範な地域に長期的な影響を及ぼしているにも関わらず、事故を起こした事業者は補償・賠償をとことんケチること、他方、都合の悪い事実は往々にして隠蔽されるということが分かります(「原発被災地、児童生徒数の減少顕著 福島県内5町村の小中学校、来春は2割減に」河北新報2019/1/6、「原発事故の和解、打ち切り1.7万人 東電が相次ぎ拒否」朝日新聞2019/1/15、「11歳100ミリシーベルト被曝の疑い 福島第一事故で」朝日新聞2019/1/21)。

(2019.1.29 事務局)

第28回市民講座”下北はいかにして原子力半島になったか”Part 2(2018.12.16)

今回の隈元信一氏の市民講座を受講しての感想を次の5点にまとめます。

  原発の恐ろしさの例えとして、原発は事故が起きると、収束するまで10万年かかる。つまり、ネアンデルタール人が引き起こした災いが現在の我々にまで及ぶということだ。

  1つの県に複数の地元新聞がある県は珍しく、青森県も数少ない県の一つだが、陸奥新報を含めると3紙あるメディア環境は良い。複数あることによって互いに切磋琢磨し県民のための報道ができる。沖縄が良い例だ。沖縄タイムスと琉球新報は、互いに競い合い県民のための報道を行っている。青森県においては、保守的な東奥日報に対してデーリー東北があり、東奥日報が扱わない事柄を報じている。

  朝日新聞が奈良岡市長の実弟の逮捕という特ダネは、革新市長の退陣と六ケ所村の寺下村長を落とす狙いで、特ダネ競争が政治に利用されてはいけないと教訓になった例だ。

  どこにも心ある人はいる。青森放送では「核まいね」という番組が上司に中止を命じられても放送された。デーリー東北の企画協力費事件では、真相究明のため社内に7人委員会ができ、自浄力があることを証明した。

  メディアは育てるもの、知事や市長も育てるものであるという指摘は、安倍政権を倒すための市民と野党との共闘の面でも、他の野党を育てることの重要性を言い当てている。

(2018.12.24 中弘南黒地区労連 須藤健二)

2018 さようなら原発・核燃「3.11」弘前集会(2018.3.3)

 

33日(土)弘前市総合学習センターで行われた3.11さようなら原発弘前集会に参加しました。「被ばく牛と浪江町に生きる」というタイトルで吉澤正巳さんより講演がありました。

一昨年も吉澤さんのお話を聴きましたが、原発事故から7年も経とうとしているのに現状は変わっていないことや事実が隠されていることを実感しました。吉澤さんの、自分たちは被害者なのになぜ自ら浪江町を離れなければならないのか、という言葉を重く感じました。

 青森県は原子力・核燃料に関しては世界でも突出し、唯一の米軍基地と原発のある危険な地域です。原発は廃止すべきだと改めて感じ、安全に暮らせる世の中となるようこれからも声をあげていきたいと感じました。

(2018.3.5 ファルマ弘前薬局 鈴木菜夏)

 

会発足10年

かつて核燃料サイクル工場の建設計画が持ち上がった時、津軽では大きな反対運動が起こりました。しかし、いざ建ってしまうとそれらの運動はだんだん下火になってしまっていました。11年前に私が県議会議員になった時、その核燃料サイクル工場の建設は終わりいよいよ本格稼働に向けて最後のガラス固化体を作る試験が繰り返されていました。私たちがあれだけ反対していた核燃サイクル工場がとうとう動き始めてしまう。何とかみんなでその動きを止める運動をここ津軽でもう一度起こしていきたい。そんな思いで当時事務局を担ってくれた竹浪さんに相談し、会を立ち上げる準備を開始しました。代表への依頼を阿部東氏、宮永崇史氏、大坪正一氏にお願いし承諾を頂き私も代表に名を連ねさせていただき、地域の組織や個人に呼びかけ「核燃・だまっちゃおられん津軽の会」が誕生しました。あれから10年たち研究者や地域で活動する人たちが一つになって市民講座や県への交渉、署名、金曜日行動などを行ってきました。この10年の間には福島原発事故が起き何としても原発・核燃はストップさせたいという思いは強まりました。この声・意志をしっかり広げ津軽の地で大いに会の役割を発揮していければいいなと思っています。

(2018.7.10 副代表 安藤はるみ

2018年度代表挨拶  阿部 東

201873日政府は第5次エネルギー基本計画を閣議決定しました。原発を従来通り「重要なベースロード電源」と位置づけ、原発・核燃サイクルを推進するものです。福島原発事故後、稼働がゼロだった原発ですが今9 基を稼働させています。また、県内の原子力関連市町村や県は原子力事業の早期推進を求めています。 74日には大飯原発の運転差し止め判決が控訴審で取り消され、925日には伊方原発の運転差し止め仮処分決定が取り消され、117日には東海第二原発の運転期間40年を超える再稼働が原子力規制委員会で認可されました。これで脱原発の闘いは、政府、企業の他に司法も加わった敵(!)との闘いとなりました。 種々の世論調査の結果では、脱原発の人々が推進の人より多いと報道されています。しかし、このままではなしくずしに原発が再稼働してしまうことを心配しています。じっとしておられません。少なくとも毎月行われる金曜日行動には 欠かさず街頭に立つ決意をあらたにしました。

 (2018.6.10 代表 阿部東)

 

池内了氏を囲む原子力問題フォーラム(2017年11月4日)

今回は科学者の社会的責任や軍事研究反対など、市民と科学者の問題に著書も多い、宇宙物理学者の池内了先生をお迎えして、原子力問題についてのフォーラムに参加しました。42名の参加がありました。前もって、日本の原子力政策や、原子力立県である青森県特有の問題など20項目以上におよぶ質問項目を池内先生にお送りし、それに回答しながらフォーラムを進める形式でした。それぞれの問題に対して具体的に定量的な数値を交えながら、説得力のある議論がなされました。おまけの質問で、このフォーラムについて「広報弘前」に掲載を申請した際に、政治的である可能性があるという理由で却下されたことを池内先生に尋ねたところ、「これほど政治的な発言はない。形を変えて、何度でも申請しなさい」というお返事でした。我々も勇気付けられました。最後に余談ですが、「池内先生はいかにしてこのように良心的な科学者になられたのか」という質問に対する回答は今後にお預けとなりました。(ちなみにこの続きは、2018811日、青森市リンクステーションで開催されます。乞うご期待!)

 (2017.11.7 事務局長  宮永崇史)